• Casa Watanabe

亜硫酸


さて、今回は亜硫酸のお話です。(ま、何しろ開発の「事務手続き」が進まず、今だ建物着工さえできない上、今日は雨で畑作業もやらないからね。長文を書こうかと思いまして。)

よくワインで頭が痛くなるのは亜硫酸のせいだと言う人もいます。しかし頭痛の原因には諸説あり、残留農薬説、純粋にアルコール説、発酵中に生成された別の物質説、などなどいろいろです。(まあ、どれもそれなりに害はあるので、どれか1つ、と言うこともないでしょう。私の場合、今はビールの方が仄かな頭痛を感じることが多いですし。)

ちなみに亜硫酸は酸化防止剤として添加します。ちょっと高校化学の復習。硫酸の化学式はH2SO4(数字を下付にできないのはご容赦)。亜硫酸はH2SO3。

亜硫酸はワイン中では普通、重亜硫酸イオンHSO3-か二酸化硫黄SO2として存在しますが、HSO3-は安定性が悪い物質であり、もう1つ酸素を取り込んで硫酸イオンSO4 2-になりたがる性質があります。このように酸素を増やす、イコール他から酸素を奪い取るという点で酸化防止効果があるわけです。(以下の説明も含めてわかりやすくする為にめちゃ単純化しています。化学の先生に見せたら怒られるかも?正しくは還元作用を理解する必要がありますが、まあ専門家でなければこんな理解で十分じゃないかな?)

しかし、ワインに入り込んだ余計な酸素を取り込むだけであれば良いのですが、例えば人体に入っても同じこと、体内の組織からでも強引に酸素を奪い取ろうとします。これが微弱な毒性という訳ですね。結局のところ、これが毒か薬かといえばやはり毒には違いありません。

しかし、添加しなければどうなるか?入り込んだ酸素はそのまま酸素として働きます。すなわち酸化が始まる。アルコール(エタノール)が酸化すると?アセトアルデヒドでしたね。これも毒性ありますが、飲んでも体内の消化の過程でそうなります。(一般には、これの分解が追いつかず体内に残ると二日酔いになる、と言われています。) それが更に酢酸に分解される訳です。体内で起こる事と大差ありませんので、毒性としてはこの際特に気にする必要ありません。しかし、当然味や香りが変わります。要するに不味くなる。これを防いでくれます。

例えば何らかの微生物が入り込んだとします。上記の通り微生物の細胞からも酸素を奪うので、これは殺菌効果としても働きます。

酸化による味の劣化や残留微生物の増殖などのリスクと亜硫酸の毒性のどちらがより悪いか?要するにバランスですね。最善を目指すよりも、最悪を回避する発想です。

では、観点を変えて亜硫酸の歴史の話をしましょう。実は相当古いのです。古代エジプト、約3,000年前の遺跡から痕跡が見つかっているそうです。(残念ながら自分の目で見ていませんので、受け売りですが) しかし、これは単に「見つかった」最古の遺跡であり、もっと古いかもしれません。ワインはジョージア(グルジア)あたりで約8,000年前から作られていた、というのが最近の通説のようですが、遺跡は残っていなくてもその頃も同じようなことをしていたのかもしれません。もちろん、古代エジプト人に代表される彼らに「亜硫酸」という概念があったという訳ではないでしょう。彼らはワイン貯蔵用の壺の中で硫黄を焼いていました。経験的にそうした方が長持ちすることは知っていたのですね。硫黄「S」です。これがワインに溶け込むことでSO2やHSO3-になる。

ワイン文化は古代ローマに引き継がれ、彼らのガリア進出によりガリア人が使用していたオーク樽と出会う。壺が樽になっても同じように硫黄による殺菌が行われ、今でも樽の殺菌にはよく硫黄燻蒸を使います。

そしてなぜそれでワインの持ちが良くなるのか、近代の観点で調べてみてそういう物質であることがわかった訳です。

さて、何が言いたいかといえば、亜硫酸の毒性など、人類の歴史少なくとも5,000年の間人体で検証され尽くしている、ということです。医学的なエビデンスとは違いますが、この規模の歴史で検証されたものは、より信頼できると思いませんか?よっぽど馬鹿げた濃度にしなければ問題はありません。(しかし困ったことに、いくつかの国の安ワインなど実際に大量に投与されている例があるから困るのですが)

これだけ歴史の古い添加物は、戦後化学的に考案されて使われている有象無象の食品添加物とは訳が違います。安全性の検証という点については、もはや「格」が違うと言っても良いでしょう。(そういう新しい物質って、確かに短期的には食中毒を防ぐ圧倒的に高い効果はあるし、無味無臭で食べても全く気付かないけれど、長い目で見れば実はめちゃ高い発ガン性作用ありますっ、てものがほとんどですし。次○塩○酸とかね。。。まあ、この種の問題は書きすぎるといろいろ障りがありますので、このくらい)

世の中には非常に良心的に作られた素晴らしい無添加ワインもあります。この種の添加物も使わず、申し分なくクリーンな環境で作られているもの。美味しくて何ら健康に負荷を与える要因もない素晴らしいワイン。こういう作り手には全く頭が下がります。これは正に最善を目指すアプローチ。しかしやはり、保存や輸送に弱いという欠点があります。ワイナリーで飲むには本当に良いのですが。。。

一方で少々胡散臭い無添加ワインもあります。実は途中の果汁保存用にソ○ビ○酸等が添加されているケースとか。材料に添加されているだけで、生産工程で添加されるわけではない、かつ材料の保存中に分解されているはず、などの理由で表示義務がなくなっているけれど、実はそもそもそういうものがかなりの濃度で残留していることを「意図的に期待して」いるケース、とかね。

さて、皆様は何を選択されますか?

手前味噌なオススメは、良心的な範囲で亜硫酸を添加したワインですよー、製造工程にも無理がないので、収穫直後の良質なぶどうを使っていてもお値段をお手頃にできますよー。


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